LGBTというと、なんだかひとかたまりのように感じませんか? 異性愛の人とは違っていて、LもGもBもTもお互いのことをよく知っている……というように。

しかし実際は、LGBTの人同士というのは、それぞれ自分以外のセクシャリティにはさほど詳しくない、とわたしは感じています。

考えてみれば、オトコにしか興味のないゲイと、オンナにしか興味のないレズビアンとでは、お互いどうやっても接点自体が少ないわけで、どちらもオトコを好きになるという点では異性愛の女性とゲイのほうがよほど近しい間柄かもしれません。

さらには、誰を好きになるかという部分が一般的ではない同性愛者と、自分の性別をどう捉えているかというところが一般的ではないトランスジェンダーの間にも、また違う開きがあります。

そんなわけで、わたしがトランスジェンダーの人と知り合ったのは自分のセクシャリティを認識してからだいぶ経った後でした。特に、「にじいろかぞく」に来てくれたあるカップルとの出会いは驚きに満ちていました。

そのカップルは、生まれたばかりの赤ちゃんを連れて、遠慮がちにやって来ました。お父さんと、お母さんと、子ども。ごくごく「一般的な」ご家族に見えたので、アライアンス(LGBTを積極的に応援する異性愛の人)なのかと思っていたところ、お母さんがおずおずとこう言われたのです。

「うちのパパは自分を女性だと思っているMTFトランスジェンダーなんですが、いろいろあって戸籍を変更せず男性のまま暮らしていて……

そしてわたし自身はずっと女性と付き合ってきたレズビアンなので、私たちの間では自分たちはレズビアンカップルなんです。だけどどこにも居場所がなくて……ここでは私たちみたいな家族も受け入れてくれますか?」

そう、このご家族のお父さんは、社会的には男性として働いていて、確かに赤ちゃんの生物学的なお父さんでもあるのですが、家庭内ではもうひとりのママとして、女性の服装で暮らしていたのです! 言われてみれば仕草もたおやか、話してみると、確かにオトコを感じない……!

トランスジェンダーというのはみんな戸籍や身体の性別を変更している人のことだ、と思っておられる方も見かけますが、トランスジェンダーの正しい定義というのは、自分の性別に違和感を持っている人、であり、性別を変更している人、ではありません(もちろん性別を変更しているトランスジェンダーの方もいます。が、性別を変更していなくとも、本人が性別に違和感を持っている時点でトランスジェンダーということになります)。

最初にその話を聞いたとき、わたしは単純に「いいなー」と思いました。わたしとしては、同性のパートナーと「結婚」ができないが故に不便なことが多いと感じているので、「結婚できるレズビアンのカップル」、しかもLGBT憧れの「互いの血を引く子ども」がいるなんて!

(余談ですが、わたしは18年前、国際結婚をした友人が子どもを持ったときに言った「ねえ素敵だと思わない? 彼とわたしのミックスベイビーなの!」という言葉が今も忘れられません。なにそれすごく素敵! 異性愛って素敵ですね!)

ところが、話を聞いているうちに、実情はそんな簡単なものではないのだと思い知らされました。本人たちは自分たちを女性同士のカップルだと思っているのに、一歩社会に出ると、夫と妻として扱われてしまう。あまりにも当たり前に、お父さんとお母さんに分けられてしまうという困惑……。

どこかで聞いたことのある話だなあと思ったら、そうです、なんのことはない、自分の家の話に似ているのでした。以前もお話しした通り、我が家は同性カップルで、家庭内ではみんなが家族だと思っているのに、一歩外に出れば法的にも他人として扱われてしまいます。

この家族も同じような、いやある意味それ以上の困難を抱えることになっていたのかと気がついたとき、目から鱗が落ちた思いでした。

この家族は、確かに結婚という制度を使うことはできています。しかしそれでも、いやそれ故に家の中と外とでは振る舞いを変えなければなりません。

トランスジェンダーとしてもう十分ご苦労のある人生なのに、せめてもの利点として使った結婚制度が結果的に自らのアイデンティティを脅かす形となって、日常の些細な場面で「自分の人生の選択は正しかったのか?」と突きつけられてしまっているのだとわかったとき、「いいなー」とのんきに思ったわたしは、なんて浅はかだったのかと恥ずかしくなったのです。

結婚制度が、この「一見すると一般的なカタチに当てはまっている家族」にとっても、あまり心地いいものでないのはなぜでしょう。

結婚とは(自他共に認める)男女がするもの」「両親というのは異性同士であるのが当たり前」という世の中の固定観念があまりに強いからではないでしょうか。そのため、せっかく使える立場にある人ですら、余計な苦しみを抱えることになっているのだと思い至りました。

もちろん多くのカップルは異性同士でしょうし、多くの両親は一般的なお父さんとお母さんでしょう。

そのこと自体は間違いのない事実ですが、世の中にはいろんな人がいて、必ずしも一般的なカタチだけじゃないんだと思っていくだけで、もしかするとLGBTの人だけでなく、異性愛のご夫婦だって、お母さんばかりが家事や育児を期待されたり、お父さんが育児から遠ざけられたり、なんてことからもう少し自由になれるのではないでしょうか。

性別の役割ばかりに捉われることなく育児を見つめたら、あらゆる人がもっと快適に家族が作れるのではないかなあと思うのです。

This article is a sponsored article by
''.